2017センター試験「物理基礎」および「物理」について

2017センター試験「物理基礎」

はじめに
大問3問でバランスよく各分野から出題されている。
時間的にも内容的にも受験生にとっては余裕があったのではないだろうか。

第1問
全分野を網羅した小問集合。ありふれた問題ばかりで,戸惑ったり立ち止まったりする必要のない素直な質問ばかり。定性的な問題と定量的な問題がうまく出されている。

第2問
前半は弦の振動で,平易な内容。計算も難しくない。
後半は電気回路の問題。問4のショート回路は,出題者の問うてみたい気持ちはわかるが,物理基礎が文系対象であることを考えるとどうかと思う。
2つの穴埋めを組み合わせて解答する設問が3/4であり,多いのではないか。問3では部分点も与えるようだが・・・
次元解析は近年よく出る傾向にある。何度か計算経験があれば,難なく解けると思われる。

第3問
オーソドックスな力学の問題で,一度は見たことがありそうな図が並ぶ。第2問と違って答えを組み合わせて選択肢から選ぶ問題はなく,素直である。ひねりのない分,平均点は高いかもしれない。

全体として
 実験を題材にした問題が見当たらない。旧課程と比べると,大きな違いである。学習指導要領で実験を大切にするよう述べている以上,出題にも実験問題があっても良いのではないだろうか。教師の実験離れを防ぐ意味でも。
 組み合わせ問題がここ数年で定着した。これは設問数増を避けているようで,実質的に問題量を増やしていることになる。第1問の問1などはこのままの形式でよいが,それ以外はもっと積極的に部分点を与えるべきではないかと思う。
 うがった見方なのですが,第2問の出題形式やレベルなどが「物理基礎」というより「物理」(理系受験者が受験する科目)に似ている。もしかしたら,「物理」のために製作された問題だが諸事情で採用されず,「物理基礎」に回されてきたのではないかという気もする。真相はわかりませんが。

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2017センター試験「物理」

はじめに
大問は6問だが,第5問(波動)と第6問(原子)が選択になっているので,大問を5問解答することになる。時間は厳しいこともなく,落ち着いて解けただろう。

第1問
小問集合にふさわしい出題。この第1問の平均点が低くなることも多いのだが,今回はそれほど低くならないかもしれない。
問4は作図で考えるか,レンス公式で考えるか迷う。前者の方が短時間で求められるが,焦らず考えることが大切。
問5は,日常生活と物理の関わりが感じられる内容で,また多くの教科書に書かれており,目を通しておきたい。

第2問
A.コンデンサーの極板間の電位差はよく問われるもので,グラフを伴うことが多い。盲点とならないようにしたい。
B.ダイオードを回路に含んでいるのが特徴的。しかしその特性は本文に書かれており,安心して解けるだろう。電磁誘導は重要単元であり,間違えたくないところ。

第3問
A.光の干渉。くさび形空気層が題材となるのはセンター試験では珍しい。質問から答えまでが遠いように思われる(解答過程が長い)。もう少し工夫した誘導なりヒントがあればセンター試験らしくなったのにと感じる。
B.熱力学は素直な良問。正答率は高いのではないだろうか。

第4問
A.円運動のように見えて,それは3問中1問だけ。実際は等加速度運動と等速円運動と力学的エネルギー保存則を問うもの。1つの装置でいろいろなことを問えるのだなと感心する。わかってしまえば後は早い。
B.運動方程式と慣性力を含む力のつりあい。問4はよく見かけるもの。問5は,力の矢印を記入しないとミスが起こりやすいのだろうか。簡単そうに見えた場合でも,きちんと力ベクトルの矢印を記入すべきでは。

第5問
問は3つで,すべてドップラー効果。振動数は普通に答えられるだろう。波長は答えられただろうか。波長は長さなので,観測者によって変わらない。
問2,問3も,一度は解いたことがあるだろう問題。典型問題である。

第6問
原子分野。第5問と同様に問は3つ。いずれも易しく基本的。問3空欄イは計算するより,太陽が周囲にエネルギーを放出しているという常識的な判断で十分である。
現役受験生は学習して間もない単元ではあるが,出題側の配慮があり,難なく解けそうである。それより,選択者が何%いたのか気になる。

全体として
「物理基礎」と同じように,「物理」でも実験を題材とした出題がなかった。その分,良くも悪くも平凡でありふれた問題ばかりとなった。毎年「さすがセンター」と思わせる問題があったが,今年は皆無であり残念だった。理科の他の科目は分からないが,「物理」は平均点が上がりそうな気がする。