今年から,文系向きの「物理基礎」と理系向きの「物理」の2種類となった。
2015年センター試験「物理基礎」について
「物理基礎」は初年度ということもあり,かなり易しい印象である。
次年度は難化するかも知れない。
【1】小問集合 20点
旧課程の物理 I の小問集合を連想する出題。
割合易しい。そして広い範囲から出題している。
易しくて平均が高くなりそうだが,選択肢を多くしてそれを防いでいるのだろうか。
選択肢があまりに多いので,見間違いに十分注意したい。
【2】波動と電気 15点
波動といっても物理基礎では光全般やドップラー効果,波の式,干渉などは含まれない。
波の進行方向がセンター試験にしては意外だったが,これまで学習していれば迷うことはない。
電気も比較的易しい。問4では消費電力を表す3つの公式のどれを用いるのか,考えたことがないと解けないかもしれない。
【3】力学 15点
ばねの力や仕事に関する問1,問2は絶対間違ってはいけない。学習が不十分だと誤答する。物理を選択したのなら,正解してほしい。強くそう思う。
問4は計算ではなく,物理現象を定性的に考えさせ,面白い問題と思った。工夫された出題である。
【全体】
易しい。平均点は高い気がする。
解いていて気づいたことだが,選択肢の数と設問の難易度に相関がありそうだ。つまり,選択肢の数が多いとその問題は易しく,選択肢が少ないと易しくないようである。(決して難しいというほどではない)
この特徴は,次年度に問題を解くときに役立つ指針となるだろう。
なお,時間的にもゆっくり解けるのではないだろうか。多くの受験生は時間が余り,もう1科目に時間を回せたと思われる。
次年度は難易度は多少上がるだろう。しかし設問数は丁度いいくらいと思う。
2015年センター試験「物理」について
「物理」も初年度である。原子分野も試験範囲ということで,現役生は受験準備が大変だったと思う。
なお,得点調整があった。センターへの注文だが,得点調整しなければならない作問は避けて欲しい。
60分の試験時間ですが,僕の場合例年通りの所要時間で解けたので,出題難易度はキープされているという印象を受ける。
特徴は,第5問と第6問が選択となっていることである。それぞれ熱と原子の分野である。
【1】小問集合 20点
広い範囲をカバーしてる。「物理基礎」より計算はあるもの,それほど煩雑ではない。いつものセンター試験に比べて選択肢が多い気がする。このあたりは「物理基礎」のレビューで書いたとおりかな。
【2】電磁気 20点
第2問は力学かと思っていたが,意外にも交流から出題開始。「理想化した素子」では伝わらない受験生もいただろう。もう少し丁寧に説明すべきではないか。
問1の,t=1〜T/2 を考えるだけで答が判明する。ここは選択肢に工夫が必要だろう。
問題リード文で電圧が最大値として与えられており,違和感があったが,問2でその狙いが明らかになった。ふーんという感じ。
Bはサイクロトロン。授業で扱うので,よく聞いていれば易しく感じたであろう。電極間を1回通過するごとにqVのエネルギーが加算されることに注意。
【3】波動 20点
A問1,問2は図形関係を手がかりに。
Bは問題文をよく読んで,操作の意味を理解すべきところ。入試準備が不十分な場合は,やや難しいかも知れない。
【4】力学 25点
ここだけ配点がやや多い。
A放物運動をよく考えて,簡便に取り扱うと答えはすぐに出る。特にエネルギーは水平・鉛直各成分として考えてみると面白いし,意味深い。
Bなかなか練られた良問だが,問5のWの式には少々違和感がある。ある意味センター独特の選択肢といえる。
【5】熱力学 15点
問1は易しすぎる。平均点調整か?
問2は普通。
問3あまり考えたことのないグラフで,とても面白い。さすがセンター! 2次試験で記述式として出題してほしいレベル。ただ,(a),(b)だけ分かると答えが出るので,(c)も考えさせる工夫が欲しかった。
【6】原子 15点
問1は教科書にある図をちゃんと見ていたかどうか。
問3は難しくはないが,現役生では習いたての者も多いのではないだろうか。選択肢は6択だが,実質2択なのは寂しい。
【全体】
初めに,出題の難易度はキープと書いた。時間的にも余裕はあるだろう。最後は熱と原子の選択なので,現役生への配慮も感じる。あるいは浪人生が「物理」を選択解答した場合を想定した配慮かも知れない。ただ,選択肢の多い設問も多数見られ,このあたりで平均点はやや下がる予感がする,
旧課程が始まった頃の珍問奇問はほとんどなくなり,学習の成果が点数となって現れる出題になっているのではないだろうか。そういう意味では,センター試験としての役割をしっかりと果たしていると言える。
残念なのは,実験を題材にした出題がなくなってしまったことである。いつも楽しみにしており,学校現場への実験の働きかけメッセージとして歓迎していたのだが,どうなってしまったのか?
来年は期待しています。